氷雨
■ストーリー
長所 | 短所 |
文章が読みやすい | 動機があまりに分かりやすい |
充実感のあるラスト | 普通にプレイすると必ず詰まる |
時系列、部屋割が関係ない | |
中盤からずっと背景が暗い |
■あらすじ
高校の卒業旅行へ出かけた誠と恵。
ところが二人は、アクシデントから山奥の洋館に漂着、ミステリーツアーの一行と一夜を明かす事となる。
そんな中、相次いで起こる惨劇は、何を物語るのか?
そして、誠と恵の二人は無事に生還できるのか?
戦慄の一夜を綴ったビジュアル・ノベル。
<Vectorサイトより>
■ゲームについて
いわゆる洋館系クローズド・サークルね。
登場人物のシルエットなどはほとんど出ずに、文章を読み進むタイプだわ。
既読スキップがなく、未読でもスキップ出来るため、読んでいない文章の判断には注意が必要ね。
あとはエンディングを迎えることで選択肢が増えていくゲームだけど、最初からベストエンディングを迎えることは恐らく可能よ。恐らくというのは私自身は数十回バッドエンドを見てからベストエンドを見たからよ。
■長所
①文章が読みやすい
変に凝った文章でなく主人公目線のストレートな表現なので、ストーリーがもたつくことなくサクサク進んでいくのが良いわ。
殺人も混乱とともに矢継ぎ早に行われていくのがこのゲームの見所ね。
ただそうした急展開の為に、登場人物同士で責め合うシーンや疑心暗鬼になるシーンがほとんど無かったのは残念よ。
②充実感のあるラスト
ラストは推理系でありがちな展開になるかと思いきや、しっかりとそこを裏切ってくれたのは良かったわ。
またベストエンドでは悲惨な事件があった中、凄く前向きな終わり方になっていて文字通りベストなエンディングとなっていた点も良いわね。
私的にはそれ以外のおかしなエンディングも結構気に入ってるんだけどね。
■短所
①動機がバレバレ
推理モノにとって致命的な動機がバレバレで誰がターゲットなのかも初めの内に検討がついてしまうのが残念だったわ。
もちろん、そこから犯人が誰かを考えるのも楽しみなんだけど、
またその動機と被害者達を殺害した理由が説得力のある結びつき方がしていないのよ。だから「犯人の仕組む仕掛けに踊らされた」というより「犯人の行動理由の不明さに踊らされた」側面が強いわ。
②普通にプレイすると詰まる
文字通り「とんでもない選択肢を選ぶ」場面があるのよね。
私はそれが分からずに総当り+最初からでスキップしながらも何時間も掛かったわ。
この選択肢を選ぶ理由もそれまでの行動や事件から絶対にありえないものなのよ。
ここで大幅にストップを食らい、テンポが一気に悪くなった感は否めないわね。
③時系列、部屋割が関係ない
洋館ゲーといえば、部屋の配置と登場人物の行動からトリックを見出すのが醍醐味だけれど、このゲームは登場人物の部屋番号も配置もほぼ分からない状態なの。
更に誰がいつ何をしていたか等も語られないことが多く、人々の時系列をまとめることも出来ないわ。
言ってしまえば、誰だって犯行は起こせるわけで、結局の所、最後に明かされる動機が一番の犯人決定の材料にしかならないのよね。
もう少し登場人物の行動や時間帯と位置から犯人を割り出したかったわ。
④中盤からずっと背景が暗い
中盤以降は屋敷が停電するんだけど、そこからラストまでほぼずっと背景が黒い為、視覚的なメリハリがほとんどなかったわ。
どこがビジュアルノベルよ!とツッコミたくなるレベルで暗いからね。
何処かに潜んでいる犯人の存在に恐怖するシーンが多ければ、暗闇であることはプラスになると思うんだけど、あまりそういうシーンがなかったから、周回プレイする上でどんどん退屈になってしまったわ
■まとめ
本当に最後の終わり方が良くてとてもいい評価をしたい所なんだけれど、やっぱり謎の選択肢で大きく足止めされてプレイの勢いが一気に途絶えたのは非常に痛かったわ。
またそれが「ありえないと思わせて実はありえる」どんでん返し的な選択肢であれば、大いに評価は上がったんだけれど、ただただ「ありえない選択」だったから、選んだ無茶苦茶な選択肢が正解だと気づいたときの徒労感は半端なかったのね。ここは本当に惜しいと思うわ。
またもう一つ言うなら「メッセージ」に関して違和感を覚える場面も、違和感どころかストレートな感想としか思わなかったの。
あとはトリックに関しても少し無理があると感じたわ。
トリック、動機、選択肢、これらのどれもあともう少し捻りが欲しかったわね。
犯人解明から終盤へのまとめ方は良かっただけに、そこへ至るまでの過程ももっと楽しみたかったわ。
点数40点