かみかくしの夜[PC]
長所 | 短所 |
雪山における描写が素晴らしい | 動機がおまけシナリオまで謎のまま |
シナリオに破綻が無く見直しても面白い | おまけシナリオのノリが古め |
■ストーリー
主人公たち大学の登山サークル一行は雪山登山中、悪天候に見舞われ、近くの洞窟へと避難する。主人公岩槻真一郎は彼女の橘理沙を含むサークルメンバーたちと共に鍋を囲み、話に花を咲かせながら一夜を過ごした。しかし翌日皆が目を覚ました時には、サークルメンバーの二人が洞窟内から忽然と姿を消していた。
■ゲームについて
タイトルこそ思いっきり「かまいたちの夜」だけど内容はしっかり別物よ。私がかまいたちの夜の内容を忘れているせいもあるかも知れないけど、プレイしていてかまいたち感が強いな、とは思わなかったわね。それよりもあまり無い雪山でのクローズド・サークルという設定が目を引いたわ。
■長所
①雪山における描写が素晴らしい
実は私、前にも雪山クローズド・サークルをプレイしたことがあるのね(「雪しまく血」)。でも雪山での食事の様子や、徐々に追い詰められていく環境なんかの描写は圧倒的にこっちが上だと感じたわ。「作者さんは雪山登山の経験がお有りなんだろうな」と思ってしまうくらい、凄くリアリティのある描写だったわ。洞窟内の空気感はまるで自分が体験した錯覚になるくらいよ。だから終盤に人数が減っていく中での孤独感とか寒さみたいなものはプレイしながらも実感出来たの。
で、その素晴らしい描写力に花を添えたのが、背景画像とBGMね。特にBGMはまさに!という感じのチョイスが多く、選曲センスの良さが十二分にうかがえたわ。
②シナリオに破綻が無く見直しても面白い
文章はこねくり回した変な表現なんかは無く、タイトかつ読みやすいものだったわ。上記のように描写力があるから臨場感もあったしね。で、肝心のシナリオだけれど、推理ノベルとして読み応えが十分にあり、徐々にサークルメンバーが減って行く中で、誰が死に誰が残るか終盤まで展開が予想出来なかったわ。
で、このゲームの面白い所は、更に犯人が判明しクリアした後からね。このゲームはシナリオがしっかりと作られているから一度クリアしてから犯人がどういう風に行動していたかを見直すプレイがとても面白かったわ。そうして犯人の行動を見つめ直すと、犯行時間も犯行に使用されたものも整合性が取れているのよね。
だから後から見返しても違和感がなく、むしろ「そこでそういうことをしていたのか」と納得できるから凄いのよ。
■短所
①動機がおまけシナリオまで謎のまま
このゲームにはメインシナリオとバッドエンドをすべてクリアしたあとにおまけシナリオがあるんだけど、問題なのは、このシナリオなしには前述のように動機が分からないままになるし、物語の結構重要な出来事も色々と判明しないのよね。
作者さん的にはきっとおまけシナリオも有りきで全シナリオをお書きになったとは思うんだけれど、このおまけがただのおふざけシナリオなのよ。で、そのおふざけの中に、何故かめちゃくちゃ重要なことが書かれてるわけ。私にはおまけシナリオが「本編で動機や経緯を書くと危うい部分の保管場所」になっているように感じたわ。
更に動機がかなり突飛なので、動機についてまで考えつく人はほとんど居ないと思うわ。だから犯人が明かされた際に納得や驚きよりも、先に凄く戸惑いが出ちゃったの。凄惨な事件を起こすに至った片鱗なんかがほんの少しでも作中に出ていたのなら、話は変わっていたわ。私はおまけじゃなくメインシナリオでうまく様々な説明を混ぜつつ、核心に迫って欲しかったの。やっぱり、おまけはおまけでメインから切り離されているのが良いわよね。
②おまけシナリオのノリが古め
おまけシナリオは多分凄く意見が分かれるとは思うのだけれど、メインシナリオのイメージをぶっ壊す無茶苦茶なシナリオになっているわ。私は嫌いじゃないのだけれど、00年代の2chやニコニコ全盛期に近いノリなので、少し古臭く感じてしまうこともあったわ。いや、ほんとこのノリはむしろ好きなほうなんだけど、人にオススメするかというと微妙なのよね(笑)
■まとめ
このゲームを見て、雪山で鍋料理を食べたいと思った人はきっと私だけじゃないはずよ。何度も言うけれど本当に描写が素敵だったわ。 冒頭でも言った通り私がかまいたちを忘れているせいで色々なネタに気付けなかったのかも知れないけど、実際「かまいたちの夜のパロディ的作品」と思わせるのが勿体ないほどよく出来たオリジナルのサウンドノベルよ。ほんともう完璧にちゃんと完成されたオリジナルのサウンドノベルだったのよね。もし「かまいたちパロディ」だと思った方がいるなら是非プレイして欲しいわ。
点数55点