雪しまく血[PC]
■ストーリー
ナカラボ様制作のホラーノベル
登山が趣味の主人公奏は風邪を引いた友人の代理として登山オフ会に参加することとなる。
6名の登山者達は意気投合し業山へと登るのだが、途中で予想外の吹雪に合い、避難小屋へ。
そこで話された怪談話は……。「この中に幽霊がいる?」
それぞれが疑心暗鬼になる中、第一の殺人が起こる
■ゲームについて
オーソドックスなノベルゲームね。
オープニングの演出は素敵だったけど、以降の演出は従来のADVのものと変わりないわ。
このゲームはクローズド・サークル系だけど、特筆すべきはその中でも群を抜いてクローズドな点ね。
舞台は本当に山小屋の一室のみで行われるのよ。
まさに今目の前で不可解な殺人が起きるというのは新鮮であったわ。
またオフ会という設定もよくハンドルネームしか知らず、またその相手の素性を確認する手段が無く疑心暗鬼に拍車をかけていたわね。
■長所
①犯人が幽霊という点
このゲームで特に感心したのは、大胆にも犯人を幽霊にした点よね。
その御蔭で一部屋という手狭な空間で超常現象を使い、犯人不明の連続殺人をやってのけたのよ。
更に普通のクローズドサークル系と違い「犯人が分かった後も恐怖が続くこと」ね
相手が超常現象を使う幽霊である以上、犯人が判明して終わりではなく、そこからいかに悟られないかというドキドキが面白かったわ。
ただしこのシーンは非常に短いので、知らないフリを続ける主人公と刻一刻と迫るタイムリミットの描写をもう少し丁寧に描写して欲しかったのよね。
②中身のある短編
プレイ時間30分の短い話の中にドラマを入れ、更にサスペンス要素を入れ伏線も張り、急展開もありで非常に面白かったわ。
犯人判明からアフターストーリーまでの畳み掛ける感じがとても良かったの。
特に私はアフターストーリーが凄く良くて、なんとも言えない余韻をしっかりと残してくれるのよね。
③凝った設定が素敵
ネット上だけの関係で素性の知らない人々。超常現象を使い人々を殺していく幽霊。
替え玉として登山オフに参加するプレイヤー。
あまり無かった設定をうまく絡めて良質のサスペンスにしている点は素晴らしいわ。
特にサスペンスものに幽霊を登場させると「なんでもあり」になって破綻しそうに思うけれど、しっかりとサスペンスしてくれていたものも凄いわね
■短所
①疑心暗鬼シーンがほとんどなく、犯人がすぐ分かる
推理ゲームとしての側面は薄く、犯人解明に至る手がかりはすぐに見つかるし、幽霊が犯人だとすればどう転んでも矛盾のある人物が一人紛れているのよね
そういう意味では、すぐに犯人にたどり着けてしまうのが残念だったかしら
また短編という特徴柄仕方がないことなんだけど、このゲーム息つく暇もないくらいどんどん人が死んでいくのよね。
だから疑心暗鬼になることもないのよね。
②主人公の替え玉設定が活かし切れていない
主人公は友人の替え玉として、チャット仲間のフリをして来ている点だけど、これがゲームに活かせていないのよね。
二度ほど主人公は口を滑らせて致命的な事を言うんだけど、あまり気にされることなく話は進んでいくわ。
で、殺人シーンになってもお互いに素性を探りあったりするシーンがないので、替え玉であるゆえのドキドキ感というのが
全く味わえないのよね。
折角ネット上でしか知らないメンバーという素敵なシチュエーションなんだからこれをもっと活かして欲しかったわ
③殺害の動機があまり感情移入できない
私が思っていた以上に事件に至る動機が軽いもので、これでここまで人殺すのッ?!って感じだったわ。
もしかするとゲームでは明かされていない部分で他にもあるのかも知れないけど。
大抵この手のサスペンスでは殺人を犯す側にも犯人なりの主張や意志が感じられるし、
「まあ殺されても仕方ないよね」って思えるのがほとんどなんだけど、このゲームは殺害部分にしこりが大いに残ったわ。
■まとめ
全体的にとても丁寧に作られた作品という印象ね。短いながら一言一言にも意味があるのよね。
蛇足かも知れないけど、もう少しプレイ時間を長くして上述したように疑心暗鬼タイムや不穏タイムをたっぷりと取り、替え玉という立場の主人公がどんな風に疑いの眼差しから逃れるかが見たかったわ。
殺された一人ひとりとの会話も少なく、感情移入する前に死んでいった人がほとんどだから、登山シーンなんかでもちょっとしたやりとりが欲しかったわね。
ただそうするとこのゲームの良さでもあるコンパクトにまとまっているという良さがなくなるから難しいものよね。
「雪山」「サスペンス」と聞いて面白そうと思った人はきっとハマると思うので是非プレイして欲しいわ。
点数50点