リンダキューブ完全版[SS]

ゲーム概要

「天外Ⅱ」で王道RPGを制作して来た桝田省治氏が世に放った異色RPG。
開発は後に「ガンパレ」を出すアルファ・システム。

ゲームの舞台は、八年後に超巨大隕石の衝突する植民惑星ネオケニア。
プレイヤーは隕石衝突までに、つがいの動物を出来るだけ多く捕獲し、脱出船「箱舟」に登録しなければならない

ゲームについて

□三本のシナリオ
このゲームは三つのシナリオがあって、プレイヤーはどのシナリオからでも始められるわ(隠しシナリオD除き)
全てのシナリオの目的は共通して種の保存。つまり動物集めよ。この時点で普通のRPGとは全然違うわよね。
世界には倒すべき魔王なんていないし、LVをMAXにしたって隕石衝突は止められない。
とにかくプレイヤーは滅亡までのタイムリミットに追われながら、動物たちを効率的に集めなきゃなんないの。

□動物集め
面白いのは動物の集め方が超自由ってところね。
「戦闘で倒して捕獲する」「商人やハンターから買う」「卵から孵化させる」「罠を仕掛ける」と色々な捕獲方法があるわ。
それに捕まえた動物は、箱舟に登録する以外にも加工して食料や道具にしたり、売ったり、一部動物はペットにしたりと出来ることが豊富なの。

□タイムリミット
あ。そうそう。「開始からタイムリミットまで八年も時間あるじゃん」なんて思わないほうが良いわ。
このゲームは月ごとじゃなく、春夏秋冬の季節ごとに時間が過ぎるから、一年とかあっという間よ。

で、このゲームの素晴らしい所は、その「徐々に滅亡が近づく雰囲気」作りの上手さよ。
タイムリミットが迫るにつれて、各地の街の住人が減っていくの。
このアイデアは感心したわ。
序盤、すっごく賑やかだった街から、少しずつ人が去り、やがて誰もいなくなる。
「初めから誰もいない街」じゃないの。徐々に街から人が去っていくの。
勿論ショップの店員も例外ではなく、いなくなるの。
終盤は「あ、あそこにいた子、もうこの星から去ったんだ」とか寂しくなりながら、人のいない街を歩くのよね。
で、どんどん終末を意識して焦り出すの。
染みて来るようなこの寂しい感じは本当に最高よ!

シナリオ

□NPCの台詞
とにかく登場するキャラ皆濃くて、街の何気ない住人の台詞すらブラックで面白いのよ!
住人達の何気ない一言一言がこのゲームの何とも言えない雰囲気を作り出してるわね。

□各シナリオについて
ゲームの三本のシナリオはパラレルワールドみたいになってるの。
三本ともネオケニアの同じ地域が舞台で、登場人物も同じなんだけど、
ストーリーやキャラの性格はシナリオ毎に大きく変化するから、同じ舞台でも話に飽きは全く来ないわね。

シナリオA・シナリオBがストーリー仕立てなのに対し、
シナリオCは自由に各地に行けるフリーシナリオよ。
Cでは最初からどの地域にでも行けるし、どのクエストをこなしたって良い。
と言うかクエストをしなくても良い。とにかく自由!
マップは小さいけどオープンワールドっぽいゲームよ!素敵!
まあシナリオクリアの為に必須のサブクエストが幾つかあるから、
完全に自由ってわけでもないけどね。

で、そんな三つのシナリオの中、あたしはやっぱりストーリーの濃いシナリオAが大好き。
Aのお話はネット各所でずっと前から話題だし、あたしなんかが言うまでもないけど、
「サイコスリラー+ハンティングRPG」って表記に違わないぶっ飛んだ内容よ。
最近のグロ満載エロゲ―とかに比べれば、表現や衝撃度は見劣りはするかもしれないけど、
90年代前半にこれを出してるんだから、やっぱりぶっ飛んでるわよね。
もし「初めてリンダキューブを知った」って人がいたら、出来れば動画配信サイトだけじゃなく取扱説明書も見ず、ゼロからプレイして欲しいわ。

□気になる点
ただ気になる箇所も幾つかあったわ。
それはシナリオCの登場人物の薄さね。
勿論シナリオCは動物集めをとことん楽しむってコンセプトなのは百も承知なんだけど、
シナリオA・Bで良くも悪くも癖のあった人達の何人かに大きなイベントがなかったのよ。
勿論ABをクリアしたからこそ楽しめるイベントも沢山あるんだけどね。
登場人物がみんな魅力的なだけに、Cでの一部キャラの会話の少なさは寂しかったわ。

あとCはクエストが少ないのよね。
当時のRPGのクエスト量と比較しても、どうしても物足りなさを感じてしまうのよ。
行く先々の街に幾つものクエストがあれば、色んな街に更に愛着が沸いたと思う。
(イベント盛り沢山になると終末感が薄れるのかもしれないけど)
とにかく雰囲気が最高だからこそ、終わりゆく世界に浸れるようなイベントが欲しかったのよ。

ゲーム性

□システム
「ダッシュシステム」「捕獲の有無による動物名の色分け」
「フィールド上で回復・武器制作可能」「難易度選択可能」などなど、
快適な捕獲ライフが送れる親切設計盛り沢山よ。
アゲインには、今でいうファストトラベルみたいに、自分の行きたい場所まで一瞬で届けてくれる「シュート」ってシステムまであるわ。

半面「ボイススキップが出来ない(一部除き)」「技アニメが遅い」みたいなスピード感を無くしてしまう部分はマイナスね。

□戦闘システム
こっちが、動物のHPを大きく上回る攻撃をすると、その動物は弾けちゃうの。
勿論、弾けた動物は捕獲出来ないわ。
しかも困ったことに経験値は、動物を捕獲した際にしかに入らないから、雑魚戦は完全な骨折り損なのよ。
だから主人公のレベルを上げ過ぎるのも考えものなの。
時間を無駄に出来ない以上、常に骨のある相手と戦うことを意識する必要があるし、そのことがバトルのマンネリや作業感を無くしているのよ。

と、ここまでかなりシステムのベタ褒めしたけど、不満が無いわけじゃないの。

□動物集め
動物集めっていう変わったテーマなのは凄く良いんだけど、登録した動物は別のシナリオに持ち越せないのよ。
だからシナリオ選択の度に一から動物を集めなくちゃいけないの。その作業が大変だったのと、攻略法を見ないと多くの人が諦めてしまいそうな難しい捕獲条件の動物もいるの。
でもだからと言って動物のデータを持ち越せちゃうと、面白くなくなるから、難しいところよね。
欲を言えばシナリオ毎にマップも動物も完全に異なる仕様がよかったわね。

映像と音楽

昔のゲームだし画質は荒いけど、AKIRAの原画をされた田中達之氏によるアニメ・イラストが随所で表示されるわ。
この世界観にこの雰囲気は反則よね。ヒロインのリンダ始め、ミーム、隊長、リンダの両親やサチコ、どのキャラも大好きよ。
声優も皆さん豪華で、中でも青木和代さんの安心感は異常だわ。

まとめ

人を選ぶゲームと言われてるけど、あたしは普通にオススメ出来るゲ―ムだと思うわ。
あ。勿論、微グロ耐性がある人にだけどね。

それからどうしてもショッキングなシーンに注目がいきがちだけど、
どのシナリオでも根底に流れている愛というテーマが私は好きよ。
色々な愛に触れ、人間や生物の儚さ脆さに触れながら迎えるシナリオCエンディングはとても美しいものだと思うの。
とにかく90年代RPGの中でも一際変わっていて、それでいてずっと記憶に残る名作よ。

評価84点

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